そもそも、医療機器って、何? 〜ヘルスケア機器とのたった一つの違い〜

最近ヘルスケアベンチャーや医療機器ベンチャーに注目が集まっていますね!ところで、そもそも医療機器やヘルスケア機器とは何なのか、説明できるでしょうか?世界的にヘルスケア分野や医療分野への注目が集まり、投資も盛んになってきている今日この頃ですが、そもそも医療機器とは何か?ヘルスケア機器との違いは?という根本の部分や、医療機器開発プロセスへの理解が不十分なベンチャーの例も多々見受けられます。場合によっては、せっかく資金調達したはいいものの開発費用が想像の数倍に膨れ上がり、結果として企業を畳まざるを得なくなるケースや、気が付かないうちに法に触れ、逮捕や訴追されるケースも考えられます。そうした悲劇に陥らないよう、これから連載形式で医療機器開発についての基本情報をお届けします!第一回となる今回は、医療機器とヘルスケア機器との違いは何なのかを説明します。

 

1. 医療機器とは?〜ヘルスケア機器との違い〜

それではまず、医療機器とは何なのかを、ヘルスケア機器との違いを踏まえて見ていきます。医療機器とヘルスケア機器との違いを表した概念図が以下です。

早速表題への答えを述べてしまいますが、医療機器とヘルスケア機器との違いとは、医療機器は医薬品医療機器等法の規制対象だが、ヘルスケア機器はその規制対象ではないという一点です。

医療機器は、医薬品医療機器等法によって以下の図のように定義されています。

一つ一つの要件を見ていきます。

① 人または動物に使われること
これは分かりやすいですね。この定義によって、人または動物に使われないもの、例えば植木用の剪定バサミなどは医療機器の定義から外れることになります。

②-1  疾病の診断、治療若しくは予防に使用されることが目的とされること
②-2 身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされること
これらは医療機器の目的についての要件です。これらについては、どちらかを満たせば医療機器と判断されることになります。②-1の要件を満たす医療機器としてはレントゲン器具や体温計、ニコチン依存症治療アプリの「CureApp禁煙」などがあります。また、②-2の要件を満たす医療機器としてコルセットや義足、マッサージチェアなどが挙げられます。逆に、これらの要件から、トレーニングジムにあるフィットネスマシン類や、現時点で診断、治療もしくは予防に使われていないApple Watchは医療機器ではないということが分かります。

③機械器具等であること
これは、医療機器を他の医薬品や再生医療等製品から区別するための要件です。医療「機器」の範囲を定めているわけですから、この要件があることは当然といえます(ちなみに、医薬品医療機器等法では医薬品や再生医療等製品についても定義がなされています)。

以上三つの要件によって、医療機器というものは定義されます。この要件に当てはまらないが、一般に健康に効果があると期待されて用いられているのが、医療機器以外のヘルスケア機器という事になります。


では次に、医療機器の製造や販売を行うために満たさなければならない三要件を見ていきます。医薬品医療機器等法第一条に、この法律による規制の目的として以下の三点が記載されています。

この三つの要件が示していることは、医療機器として承認等を受けるためには、まずその機器が病理等に対して有効に作用し、副作用や機能の障害等の問題も少なく安全であり、かつ製造後市場でも品質が保たれたまま患者に使用されることが求められるということで、医療に使われることを考えれば自然に思える要件です。市場に出回る医療機器がこれらの三要件を満たしていることを担保するため、医薬品医療機器等法による規制が行われます。詳しくは次回以降の記事で説明したいと思いますが、医療機器の規制として、医療機器そのものに対する規制と、製造や販売を行う業者に対する規制という二種類の規制が行われています。

これに対して、医療機器以外のヘルスケア機器はこうした要件や規制の対象になりません。そもそも医療機器の要件を満たさないため当然と言えます。つまり、一般の製品と同じように製造や販売が行えるわけです。

 

2. 広告規制について

さて、ここまでお読みになった方は「医療機器って要件とか複雑でめんどくさそう!医療機器以外のヘルスケア機器の方が圧倒的に楽じゃないか」と思ったのではないでしょうか。さらに、「フィットネスマシンやApple Watchが医療機器じゃないなら、自分たちも似たような、医療機器の要件に該当しないものを作ろう!」と思った方もいるかもしれません。確かに、医療機器以外のヘルスケア機器を製造、販売等する場合には、医薬品医療機器等法の規制対象ではなくなり、面倒な承認申請や登録等をする必要がなくなります。しかし、その場合には製品の用途や広告等に大きな制約がかかる事になります。まず、医療機器としての要件に当てはまらないようにするため、診断、治療若しくは予防に用いることを目的とすることと、身体の構造もしくは機能に影響を及ぼすことを目的とすることが不可能になるわけです。そして、もう一つの大きな要素として、医療機器としての承認等を得ない限り、その製品について医療的効果を謳うことができなくなります。これがいわゆる広告規制というものです。医療機器として承認されるということは、上述した有効性、安全性、品質維持という三要件が保証されたことを意味します。その三要件が保証されるからこそ、初めてその機器の医療的効能があるということが言えるようになるわけです。裏を返せば、医療機器として承認されない限りは製品に医療的効能があるとは言えないという事になります。そのことを保証するために医薬品医療機器等法に定められているのが、広告規制と呼ばれる規制です。医療機器ではないにも関わらず医療的な効能を謳うと、製品の全品回収や行政処分といった厳しい処置が取られることがあります。以下に、行政処分の例となった事例をご紹介します。

事例
枕に安眠効果があるとし、「うつ状態、不眠症、過敏症の方に」という広告を行った業者が、未承認の医療機器的効能効果を謳っているとして違反とされた。

こうしたように、自社の製品について医療的な効果を標榜したい場合には、医療機器としてその効果があることを認められている必要があります。自社の製品の効用を謳っただけで…と思われるかもしれませんが、患者に用いられる医療機器の品質を保ち、また医療という人の生命や身体に関わるサービスの適正さを担保するために必要な規制であるという考え方が取られています。

 

以上、医療機器と医療機器以外のヘルスケア機器を対比し、医療機器を取り巻く規制について導入部分の解説を行いました。ヘルスケアや医療の業界に足を踏み入れようとする場合、自社の開発しようとしている機器が医療機器なのか、あるいは医療機器以外のヘルスケア機器なのかということを明確にした上で、広告表現等に気を使いつつ製造や販売をしていく必要があります。次回以降は、医療機器開発に話題を絞り、具体的にどのような規制があり、どういった手続きが必要になるのかといった部分について書いていきます。これから医療機器開発に従事しようとしている方はぜひお読みください。

また、Medical Startup編集長でありこの記事の執筆者である寺田が個人的に、Twitter(https://twitter.com/Ayato_spulse)で相談等を受け付けていますので、医療機器開発にご興味をお持ちの方はぜひ一度お話ししましょう!

最後までお読みいただきありがとうございました。

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ABOUTこの記事をかいた人

Medical Startup 編集長 / Aillis株式会社インターン生 東京大学法学部三年。医療分野未経験から医療機器ベンチャーのAillisにインターンとして参加。臨床研究等の薬事分野に従事。