日本最大規模のヘルスケアビジネスコンテスト Healthcare Venture Knotイベントレポート_パネルディスカッション編

ヘルスケアベンチャーと医療者をマッチングし、医療・介護福祉の現場のニーズに即したアイデアを支援するため、2018年9月9日に開かれたビジネスコンテスト「Healthcare Ventures Knot」。

ヘルスケアスタートアップと医療者。どちらもヘルスケア領域をより良くしたいという想いで日々挑戦している。しかし、両者は、課題に対するアプローチ方法や考え方が異なるため、ミスコミュニケーションがしばしば起こり、接点機会が少ないのが現状だ。今回は、ビジネスという手法で医療介護等の現場の課題を解決することが有意義であることを議論するべく、2018年9月9日に開かれたイベント「Healthcare Ventures Knot」を紹介する。

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【Healthcare Ventures Knot】

■イベント情報

主催:キャピタルメディカベンチャーズ
SHIP( Shinjuku Healthcare Incubation Park )
協力:神奈川県 ヘルスケア・ニューフロンティア・ファンド
補助金支援:東京都 インキュベーションHUB推進プロジェクト
協賛:一般社団法人健康予防医学財団みなと健診クリニック
会場サポート:デジタルハリウッド大学

■イベントスケジュール

第1部 パネルディスカッション
『本当に必要なヘルスケアサービスは何か』をテーマに、乳がんや子宮頸がんについて、患者×医療者×スタートアップの当事者3名をお招きして、パネルディスカッションを開催。
テーマ1:『乳がんの早期発見とミライの検査』~日本人に合った乳がん検査を考える ~
テーマ2:『患者にとって最も適切な治療とは』~ AIはがん治療を大きく変えるのか ~
第2部 コンテスト
アーリー部門(スタートアップによるヘルスケアビジネスコンテスト)
アイデアピッチ部門(ヘルスケア課題解決ビジネスアイデアコンテスト)
※各々ファイナリスト4名/社のプレゼンから、それぞれ最優秀賞を選定。
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今回のレポートでは、下記の順番でイベントの一部を紹介していく。

➀第1部 テーマ1『乳がんの早期発見とミライの検査』~日本人に合った乳がん検査を考える ~
➁第1部 テーマ2『患者にとって最も適切な治療とは』~ AIはがん治療を大きく変えるのか ~
➂第2部 アイデアピッチ部門(ヘルスケア課題解決ビジネスアイデアコンテスト)
➃第2部 アーリー部門(スタートアップによるヘルスケアビジネスコンテスト)

第1部 パネルディスカッション
テーマ1:『乳がんの早期発見とミライの検査』~日本人に合った乳がん検査を考える ~

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<登壇者>
・当事者:元SKE48 矢方 美紀
・医療者:医師 中山 裕次郎
・スタートアップ:(株)Lily MedTech代表 東 志保
<モデレーター>
(株)キャピタルメディカ・ベンチャーズ 代表取締役 青木 武士
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当パネルでは、『乳がんの早期発見とミライの検査』をテーマに乳がん検査の重要性ついて議論した。
今回、当事者として参加したのは、元SKE48 矢方 美紀さん。矢方さんは、2017年2月までSKE48のメンバーとして7年半活動をしていた。今年1月にタレント小林 麻央さんの報道をきっかけに行ったセルフチェックから乳がんが見つかり、現在治療中だ。ビジネスの視点からは東 志保さんが参加。東さんは、2016年5月に株式会社Lily MedTechを起業し、複数の臨床医と協力して臨床研究を行い、乳がん用の画像診断装置の開発を行っている。そして、医療者として参加したのは、現在福島県郡山市の総合南東方病院外科医長の中山 裕次郎先生だ。

パネルディスカッションでは、主に矢方さんの乳がん発見の経緯から現在の治療について、乳がん検診の重要性について議論された。矢方さんは、乳がんが見つかってからの心境の変化を聞かれ、「病気になってから、より前向きに生きていこうとポジティブな考えを持つようになった。病気それ自体が自分のすべてではないし、自分らしくいることや自分にしかできないことをすることで前向きになれた。」と語った。現在は、毎週1回病院で点滴抗がん剤をうち、10月からは放射線治療を行う予定だそうで、モデレーター青木さんからの「乳がんになってから生活は変わった?」という質問に対しては、「治療前は、仕事やプライベートも大変だろうなと思っていたが、スケジュールをしっかり組めば、仕事やプライベートの両立ができ、自分が病人であることを忘れるときもある。まだ病院に行くことは大きな負担になってない。」と答えた。

また、Lily MedTech東さんは、「実体験として、高校生のときに母親を脳腫瘍で亡くした。マンモグラフィの精度が低いという問題に対して、当事者意識からベンチャーを創業した。」と話した。「マンモグラフィは、精度が低いんですか?」という質問に対して、「日本人は、40~60歳代のがん罹患率が高い。その世代の半分以上は高濃度乳房でマンモグラフィと相性が悪い。」と答え、中山先生も「マンモグラフィでがんをみつけることは非常に難しい。」と話した。
現在の乳がん検診の対象が、40歳以上の女性であることに対して、中山先生は、「対象年齢を下げて若い人に検診をさせることについては、メリットとデメリットをしっかり考えなければならない」と説明。病気が早くみつかる(かもしれない)というメリットがあるものの、デメリットとして検査陽性とされてしまう可能性、本当はいらなかった針を刺す検査や手術、医療費等を上げた。

最後に矢方さんは、「病気になったときは、病院に行くことが怖かったが、患者のために日々病気と向き合ってくれている先生や看護師の方々がたくさんいることを知り、これからも毎日真剣に病気と向き合いつつ、楽しむことを中心に治療をやっていきたい」と力強い言葉を残した。東さんは、「乳がん検査の現状の課題対して、ベンチャー企業として解決をしていていきたい」と語った。中山先生からは、「これから求められる医療機器、医療システムは、”より痛くなく、やり安く、より簡単なもの”が求められる。ヘルスケアベンチャーのみなさんがよりよりサービスをつくってくれることを期待している。」とメッセージを送った。

 

第1部 パネルディスカッション
テーマ2:患者にとって最も適切な治療とは~ AIはがん治療を大きく変えるのか ~

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<登壇者>
・当事者:一般社団法人シンクパール 難波 美智代
・医療者:医師 柴田 綾子
・スタートアップ:アイリス(株)代表取締役 沖山 翔
<モデレーター>
ハイズ(株)代表取締役社長 裵 英洙
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2つ目のパネルディスカッションでは、『患者にとって最も適切な治療とは』をテーマに、患者目線になった最適な治療方法は何なのか、AIがもたらす患者や医師のメリットなどについて議論された。
当事者として参加したのは、女性の健康教育と予防医療の推進を行うシンクパール代表の難波 美智さん。スタートアップとして参加したのは、AI×メディカル領域でNo.1起業家の呼び声高い株式会社アイリスの代表取締役沖山さん。沖山さんは、日本赤十字社医療センター救命救急科での勤務、ドクターヘリ添乗医を経て2017年アイリス株式会社を創業。医療の現場で、医者や患者にとって必要なAIの導入に挑戦している。そして、医療者として参加したのは柴田 綾子先生。柴田先生は、淀川キリスト教病院産婦人科医でありながら、LINE BOTを使って妊娠と性に対する正しい知識を提供する「ラッコの妊娠相談室」というツールを作るなど女性が働き続けるための支援や環境整備を行っている。

難波さんは、「2009年の9年前に子宮頸がんになった。そのときは気が動転していることもあり、情報過多で何が分からないのかがわからない状態だった」と語った。そして、「そのときの実体験で感じた”がんになったときに誰に聞いていいかわからない”、”どんな情報を受け取るべきかわからない”という課題に対して、伝えることやつなぐことならできるかも知れないと思い、シンクパールを立ち上げ、啓蒙活動を始めた」と話した。産婦人科医の柴田先生は、難波さんが取り組まれている子宮がん検診の啓発と促進の重要性に共感し、「がんは、予防・早期発見が一番大事。しかし、医療者という立場では難しい面が多い。啓蒙活動に加えて、産婦人科をより来やすい場所にすることや、自己検査キットの活用とAIの活用を組み合わせて産婦人科に行かなくても女性が気軽に健診ができるようにしていきたい」と語った。

医療業界でのAIの現状について、沖山さんは「ディープラーニングを活用した医療画像のAIは流行しており、一部の領域では専門家の診断よりも精度が高くなっている。だが、まだまだ研究段階であり、購入できるプロダクトはない」という。今後のAIの更なる進化を見据え、モデレーター裵さんの「AIによる診断結果は、人間に受け入れられる?」という質問に対して、難波さんは「患者目線で言えば、現段階でも診断のプロセスを医者に任せてるので、得に問題なく受け入れられると思う」と答えた。そして、医療現場にAIが取り入れられることに対して、柴田先生は「医者は、患者に対して今の状態を伝えることはできるが、未来予測は経験に頼る部分が大きく個人としてはまだ伝えられないこともある。患者が知りたいことは病気になった後の未来についてなので、AIを活用して患者の生活やキャリアプランをサポートしていきたい」と、AIと共存して患者をサポートしていきたいと語った。そして、沖山さんも「AIの得意なことは、情報の整理。その先の判断はAIにはできない。」と答え、自身も「信頼される医者になるために、命に関わるような大切なことを患者・家族らが受け入れられる”空気づくり”や”人としての人間性”を磨き、患者によって異なる判断基準をサポートしていくことを意識している」という。

最後に、難波さんは、「自身が一番安心できたことは、子供や家族のぬくもりやサポートだった。AIやテクノロジーの発展に並行して、人間同士のコミュニケーションを大切していける医療をつくっていきたい。」と語り、沖山さんは、「AIが得意である情報の整理を担ってくれれば、情報の整理、患者への伝達、研究、教育等多忙な医療者が、患者に向き合うことがよりできるようになる。」とテクノロジーへの期待を語った。そして、柴田先生は、「今の医療は、患者視点ではない。患者視点で、ビジネスやデザインの観点から医療を見直し、よりユーザーフレンドリーな治療をしていきたい」と話した。また、モデレーター裵さんは、「ヘルスケアは、あったらいいなというものではなく、なくてはならないもの。本当に社会が必要としているものであれば、患者も医療者も皆ハッピーになる。患者ファーストのよりよいサービスを作っていってほしい。」とヘルスケアベンチャーの観客にメッセージを送った。

次の記事では、アイデアピッチ部門(ヘルスケア課題解決ビジネスアイデアコンテスト)の様子をお伝えする。(執筆 森田秀俊)

 

⇒Healthcare Venture Knotイベントレポート_アイデアピッチ部門

⇒Healthcare Venture Knotイベントレポート_アーリー部門

 

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